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高校ボクシング部を舞台に、天才的ボクシングセンスの鏑矢、進学コースの秀才・木樽という二人の少年を軸に交錯する友情、闘い、挫折、そして栄光。 二人を見守る英語教師・耀子、立ちはだかるライバルたち......。 様々な経験を経て二人が掴み取ったものは!? 『永遠の0』で全国の読者を感涙の渦に巻き込んだ百田尚樹が、移ろいやすい少年たちの心の成長を感動的に描き出す傑作青春小説! ボクシング小説の最高傑作がいま誕生した!
導入がいい。厚めの本は、導入の数ページで挫折したくなるものが多いが、導入の2ページで既に吸い込まれる。 放送作家という、飽きっぽい観客を対象にしたTV映像の世界で生きてきた作者ならではなのか。 この本の読者の真の対象はいわゆる「青春まっさなか」世代ではないような気がする。 中心となる高校生達を、多くの大人たちがそれぞれ過ごしてきた人生と価値観を元に囲み、 それぞれの思いで、彼らに対して行く。 リミットを超える瞬間を求め、情熱を取り戻す喜びを、是非体感して欲しい。
熱い話である、胸すく話である、それでいて胸が締めつけられる話でもある。 とにかく、グッとくる事請負の小説。 物語は、優紀と、高校のボクシング部顧問の耀子の視点で終始展開する。 ふたりと、共通の“大きな存在”鏑矢、誰に感情移入しても面白く読めるが、個人的には優紀の“物語”により共感を持って読んだ。
ボクシングは相手の運動能力を破壊する目的で人体の急所ばかりを狙って殴る格闘技。 本編中に語られる定義は、このスポーツの本質を明確に言い表している。 これはまた、本格的なボクシング小説。 ルール、トレーニング、テクニック、戦術、闘争本能、そして精神世界と、ここまで細部に渡って描写された小説を知らない。 鏑矢を始め、ボクシング部員たちも、優紀、友野ら優等生たちも、皆嫌味なく清々しく書き込まれていて、いまどきこんな純粋な若者たちばかりなのかとも思うが、やはり好感が持てる。 ずば抜けて才能がある者と、絶え間ない努力でその位置に上ろうとする者。 “努力”、“天才”、“才能”、“一流”の本質について見事に言い得ているのも魅力的だ。 若い人はもちろん、かって若者だった人や女性にも是非お薦めの1冊と言っておきたい。
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