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僕たちの終章はピンボールで始まった。 雨の匂い、古いスタン・ゲッツ、そしてピンボール……。 青春の彷徨は、いま、終わりの時を迎える。 さようなら、3(スリー)フリッパーのスペースシップ。 さようなら、ジェイズ・バー。
女の温もりに沈む<鼠>の渇き。 やがて来る1つの季節の終りデビュー作『風の歌を聴け』で爽やかに80年代の文学を拓いた旗手が、ほろ苦い青春を描く3部作のうち、大いなる予感に満ちた第2弾。
いくつかの挿話は 結局答えが出てこないまま終わっていく。 その辺のもどかしさも 既に村上らしい仕立てになっている。 但し叙情性に満ちている。 特に 冒頭の井戸掘りの話からはじまり 最後は11月の雨で終わる本作は いたるところに水のイメージに満ち溢れている。 その鮮烈さも捨てがたい魅力だ。 そうして これが重要だと思うが 前期村上春樹の一大命題である「直子」という女性が 本作には登場している。 その悲劇性は既に ノルウェイの森の「直子」を予告するものになっている。
村上作品に何を感じるかは人それぞれだと思う。 僕にとってはこの作品は彼の作品の中で一番リアリティを感じてしまう。 1970年代僕もピンボールに夢中だった。 淡々と異性と付き合い、ビールを毎日飲み、思想もなく、当然にそこに政治もなかった。 彼の作品の「こちら」と「あちら」が渾然一体となった生活があったのは事実だと思う。 それがこの作品以降明確に分離する。 僕にとっては村上作品の出発点はこの作品からだと思う。 彼の原点を知る上でも外すことの出来ない作品であるのは間違いないと思う。是非とも読んでみて欲しい。
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