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おすすめの徹夜覚悟の本★フィリップ・マーロウという生き方★『ロング・グッドバイ』レイモンド・チャンドラー (著)、村上 春樹 (翻訳)
あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。 何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。 しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。 が、その裏には哀しくも奥深い真相が隠されていた… 大都会の孤独と死、愛と友情を謳いあげた永遠の名作が、村上春樹の翻訳により鮮やかに甦る。 アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞受賞作。
村上春樹による新訳本が出版された。 これは、はっきりいってすごいです。 原作の雰囲気に忠実な村上訳もさることながら、オリジナルのミステリの面白さ、語り部としてのフィリップ・マーロウの圧倒的な存在感にあっという間に引き込まれ、読み始めたら止まらなくなってしまう。 LAでのある殺人事件がきっかけで、重層的に織り成す人間関係の描写から、幾重にも仕込まれたミステリの謎解きも見事。 しかし、もっともすごいのがフィリップマーロウの存在。 村上春樹はあとがきで90ページも費やしているのですが、これだけでほとんど解説本の域に達しており、一冊分の価値があるくらい。 マーロウの行動は、彼の人間としての自我意識の実相をすべて反映していると思えない一方、行動描写は一貫性をもった視点で貫かれている。 ゆえに、マーロウは、実在の人間というよりは『純粋仮説』そのもの、または『純粋仮説の受け皿』であると。 これほど見事な解説には初めてお目にかかった。
マーロウ=ハードボイルド=純粋仮説の受け皿、、、なるほど!!!!
しかし、別れるということは、これまでの自分の一部が失うことだ。 と知り、言葉の深さにしばし呆然とした。 もしくは、その時その時の別れにそれほどの思いを抱いて来ただろうか。 そう思うからこそ、ロング・グッドバイで描かれる世界観に惹かれ、圧倒的な 苦しさを覚えながらも頁をめくる手が止まらない。 徹夜覚悟で読んでください。 (徹夜するぐらい面白い本、徹夜するぐらい面白い小説。)
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これまた、僕にドンピシャの小説。 僕は中学生の頃、陸上競技の100mと三段跳び、400mリレーをやっていた。 この『一瞬の風になれ』は高校生の陸上への、そして人生へのひたむきさを見事を描いた作品になっている。
主人公である新二の周りには、2人の天才がいる。 サッカー選手の兄・健一と、短距離走者の親友・連だ。 新二は兄への複雑な想いからサッカーを諦めるが、連の美しい走りに導かれ、スプリンターの道を歩むことになる。
どこまでも速くなること。 信じ合える仲間、強力なライバル、気になる異性。 神奈川県の高校陸上部を舞台に、新二の新たな挑戦が始まった――。
新二が走る100m、200m、400mなどを中心に、各競技のスピード感や躍動感が迫力を持って伝わってくる。 特に、本書の山場とも言える4継(4人がバトンをつないで合計400mを走るリレー)では、手に汗握る大熱戦が展開される。 丁寧な人物描写も、物語に温かみを与えている。 生き生きと描かれる登場人物たち、彼らが胸に抱えるまっすぐな想い。 その1つひとつが、小説全体に流れる爽やかさを生み出し、読み手の心を強く揺さぶるのだ。 何かに、ひたむきに打ち込むこと。 風のように疾走する新二や連を追ううちに、読者は、重たい現実を一瞬だけ忘れ、彼らと同じ風になることができるのだ。
しかし書いてあることを要約すれば 「高校生の男が走る」という、ただそれだけだ。 セックス・シーンは皆無。暴力もふるわれない。 人が死ぬ場面もない。 主人公や恋人が 突然白血病になったりしない。 通俗的なドラマで話を盛り上げるために導入される要素が ほとんどない。 それでいて読後には読む前とは異なる世界が眼前に拡がる。 もしかしたらこの世の中はすごく魅惑的なものかも。 そう感じて生き返った気がする。
走るというシンプルなことからも、希望や真実は伝わる。
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